深読み47巻レビューPart3



47巻の続きである。

(8)伊豆沖
さて、47巻スポーツデッキのシーンから船を降りるまでを書こう。
47巻、速水真澄と北島マヤの二人が船のスポーツデッキで恋人同士になった後、船は伊豆沖を港に向って航行して行く。
速水はマヤに伊豆に隠れ家のような別荘があると話す。速水は別荘の様子をマヤに語る。また、別荘では本当の自分を取り戻せる気がすると言う。マヤは速水の隣に立ち、速水の話を聞きながら、速水の心の内に思いをはせる。その時マヤの耳に速水の意外な言葉が飛び込んでくる。
「今度遊びに来るか」と……。
見上げるマヤの視線の先に、思わず手で口を覆った速水がいた。
この時の速水の心情だが、マヤを別荘に誘う言葉に、裏表はないと思う。
速水真澄が例え、結果を考えずに行動しない男であっても、この時の速水には、伊豆の別荘にマヤを招いた結果を考えてはいなかったと思う。
何故なら、恋人となったマヤを前に、自分を取り繕う必要がなくなったからなのだ。自分自身を素直に曝け出していいのだ。
私の推測だが、速水は別荘がどういう所かマヤに話しながら、ふと、砂浜をマヤと歩く所を想像したのではないかと思う。
或は、星を見るテラスにマヤといる光景を。
だから、何気なく言ったのだと思う、「遊びに来るか」と……。
が、言葉にしてしまった途端、その言葉の意味に瞬時に思い至ったのだろう。そして「しまった」と思ったのだと思う。
それが、自身の口を塞ぐ行為になって現れたのだと私は思う。
そして、多少、ばつが悪そうに速水は続ける。
「嫌なら断っても……」
しかし、マヤは「いいんですか?」と答える。驚く速水。
「速水さんのそんな大事な所へ あたしなんかが行ってもいいんですか!?」と答える。この時、マヤはまだ、伊豆の別荘に行く意味を理解していない。更に、速水が強調して「いいのか? おれひとりだぞ」と言う。
マヤは、(速水さんひとり…!) どきーん (別荘にふたりきり… 満天の星… テラスで… きっとその夜は帰れない…! きっとその夜は…!)とどきどきする。

この時のマヤの返事を待つ速水真澄の表情がいい。イエスと言ってくれるか、どうだろうかとどきどきして待っているように思う。

「はい… 速水さん… はい…! あたしもひとりで行きます」と答えるマヤ。

速水の驚いた顔。少し嬉しそうに見えるのは私の勝手な思い込みだろうか。

更に、速水が「いいのか? 本当に?」ともう一度念を押して聞くが、「はい、迷惑でなければ……」と答えるマヤ。

二人が互いに相思相愛だと気が付いて、時間的にしてどれ位経ったのだろう。1時間くらいだろうか? 鷹宮紫織の気持ちに応えようとして出来なかった速水真澄。桜小路優からどんなに求愛されても優しい人としか思えなかった北島マヤ。その二人が互いの気持ちが通じてたった1時間程で一晩共に過す約束をしてしまう。これが相思相愛という事なのだろう。読んでいるこちらが赤面してしまう程だ。

さらに話は続く。船では朝食の用意が出来たと告げるアナウンスがあるが、二人はスポーツデッキで静かに時を過している。
速水は恋人となったマヤを前に素直に真情を吐露する。速水の言葉にマヤはピトっと身を寄せ速水に寄り添う。言葉ではなく身を寄せるマヤがいい。そんなマヤの肩を抱き寄せる速水。二人は思う。「そばにいるだけでいい」「それだけで心が満たされる」と……。
やがて、船は静々と港に入る。鷹宮紫織の待つ港へ。
船を降りた速水真澄とマヤ。速水はマヤの肩をガシッと抱きながら言う。「信じてまっていてくれ。きっと君をいい形で伊豆に迎えたいと思う」と。
速水の決意が滲むいいシーンである。

そして、鷹宮紫織の発作があり、速水真澄はマヤをタクシー乗り場へ連れて行く。迎えに来た桜小路にマヤを託す速水。去って行く速水の後ろ姿にマヤは、大切な事を話していないと思う。マヤは速水を追いかけて告白する。
「あたし、大人になりますから、(中略)あたしのこと 待ってて……」
抱きついてきたマヤを抱き返しながら速水が言う。
「もちろんだ、もちろんだとも……」

このシーン、解説は不要だろう。
あえて、深読みするなら、マヤを追って来た桜小路に二人の関係を知らしめすシーンなのだ。
その結果、桜小路は事故を起してしまい、黒沼組の「紅天女」は主演男優の棄権というピンチを迎えるのである。いうなれば、次の山場に向っての助走のシーンだろうか。

47巻、ラスト。
事故を克服、怪我をしながら一真役に挑む桜小路優。鷹宮紫織と婚約解消を決意した速水真澄。衰えて行く視力と戦う姫川亜弓の姿で47巻は終わっている。
速水は無事、鷹宮紫織と婚約を解消出来るのだろうか? 視力の衰えて行く姫川亜弓は試演の舞台に立てるのだろうか? ぜひ、見守って行きたいと思う。


今回の深読み、目新しい解釈はなかったと思う。実は、いろいろと書いたのだが、47巻のレビューからかなり外れてしまうので、別記事「47巻レビューを書き終えて 雑感」とした。
こちらも楽しんでいただけると嬉しい。






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