深読み「ガラスの仮面」第一弾

 こじつけといわれればそれまでなんですが、よければ駄文、読んでやってくだされ(^_^)



「ガラスの仮面」における「源氏物語」の影響

「源氏物語」が「ガラスの仮面」にどのような影響を与えているか検討してみた。


まず、速見真澄と北島マヤの関係である。
一人の男が少女を育てる点において一致しているといえる。
次に、「ガラスの仮面」全体に薄くかかるベールのような紫の影である。
「源氏物語」は、別名「紫の物語」「紫のゆかりの物語」と呼ばれていた事を考えると「ガラスの仮面」全体に落ちる紫の影にやはり源氏の影響を受けていると思わずにいられないのである。


それでは、他の部分が「源氏物語」のどんな部分に相当するか、あてはめてみた。


光源氏にとって初めて恋心を覚え、生涯、その面影を追い求める運命の女性が藤壺である。
作者が意図したことかどうかわからないが、「ガラスの仮面」において、源氏の藤壺に当たるのが、「紅天女」だろう。
月影千草ではなく、「紅天女」という幻の女が藤壺にあたると思われる。
速水英介が恋焦がれる「紅天女」は、真澄にとってもまた、人生で初めて出会った美しい女性であった。
入ってはいけないといわれていた奥の部屋の扉がたまたま開いていたため、真澄は、つい中をのぞいてしまう。(コミックス35巻)大体、してはいけないといわれると、かえって興味をそそられる物である。この時の真澄もそうだった。ついつい、中を覗いてしまうのである。そして、美しい女の肖像画を見つけるのだ。魅入られたようにふらふらと部屋に入る真澄。6歳の真澄にとってかなりインパクトのある物だったろう。
 しかし、真澄は英介のようにその美しさに溺れることはない。英介の自分や母への理不尽な態度に怒り英介への復讐を決意し、その道具に「紅天女」を使うのだ。英介から「紅天女」を奪い、大都芸能でもなく英介でもない自分が上演する事で、英介への復讐を果たそうとするのである。真澄にとっても、また、「紅天女」は運命の女性となったのである。

 「源氏物語」の中で、光源氏は、運命の女性である藤壺に生き写しの若紫(藤壺の姪)を、自分の屋敷に引取り、理想の女性として育てる。
北島マヤは、月影千草に見出され、紅天女候補となった少女である。
紅天女=藤壺なら、紅天女候補=若紫という図式は描けないだろうか?
そして、真澄もまた源氏と同じように、紅天女候補のマヤを育てる事になる。
確かに、源氏ほど能動的にではないが、直接間接に育てるのである。
礼儀を教え、高校に通わせ、演技に行き詰れば、ヒントをあたえ、部下(聖唐人)に見守らせ、そして何より、「紫のバラの人」として、マヤの精神的支柱となるのである。
速水真澄と北島マヤの関係は、光源氏と若紫の関係といえる。
やがて、源氏は、若紫(後の紫の上)を、深く愛するようになり、生涯でもっとも愛した女性となるのである。
真澄もまた、マヤを愛するようになる。ただ、源氏と若紫のような幸福な関係ではない。
 こういった符号により「源氏物語」の影響を感じてしまうのである。

 真澄は、速水英介によって、幼い時から、経営者としての資質を見出され英才教育を受けた結果、若くして、大都芸能の社長になるまでになった。義父への復讐の為、必死に経営者になろうとした結果でもあった。しかし、それはまた、誰も愛さない誰からも愛されようとは思わない、心に鎧をつけ、敵と戦う為に牙をもった、非人間的な真澄を作ってしまった。しかし、北島マヤの演技への熱い思いに触れることによって、真澄がもともと持っていた優しさが現れるようになり、結果、人間的な真澄へと変わっていくのである。その真澄の心の変化を象徴的に表すのが、紫のバラである。
この紫のバラによって物語全体に紫の影が投げかけられ、結果、「源氏物語」の影響を感じてしまうのである。

 このように源氏の影響を「ガラスの仮面」に見出してきたとき、では、鷹宮紫織は、どの女君にあたるのかといえば、やはり、女三宮だろう。
光源氏は、紫の上を愛しているが異母兄の朱雀天皇から女三宮をぜひ妻にと請われ、最初は断るつもりであったが、藤壺縁の女性という罠にはまってしまい、妻に迎えてしまう。
源氏に藤壺の縁の女性という罠が作者紫式部によって用意されていたように、真澄にとっては、大都芸能にとって最良の女性であるという罠が用意されている。
真澄もマヤを愛しているが、義父の英介から、命令されたうえ、大都芸能にとって、最良の女性であるといわれて仕方なく見合をしてしまう。
 ただ、鷹宮紫織と女三宮はそのそれぞれの主人公に対する立場が似ているだけであって、性格は全く違う。もし、女三宮に鷹宮紫織ほどの気概があれば、柏木との関係はなかっただろう。

 また、具体的な表現もある。
「ガラスの仮面」未刊行部分、連載287回に姫川歌子が主演した映画の名前が「紫燃える」。内容は「光源氏が理想の女性として育てた紫の上の内面を描く映画」となっている。
 こういった具体的な表現がある点からいっても、「ガラスの仮面」には源氏物語の影響があると思われるのである。




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