一万アクセス記念 「かりんの冒険」
その日、私、卯月かりんは、某古書店で手に入れた魔法書の指示に従い、ある願いを叶えるべく真法陣を書いていた。
呪文を唱え、護摩を投げ込む。
シュッシュッシュッ、シュワー、シュッシュッシュッ!
現れたのは、年ふりた杖持つ女魔法使い。
私は最新式のしわ取りローラーを差し出し、
「お願い、私を『ガラスの仮面』の世界へ連れて行って!
『別冊 花とゆめ 2010年1月新年特大号』の『ガラスの仮面』の世界へ!」
女魔法使いは、しわ取りローラーをしみじみと見ていたが、やがて、自身のしわだらけの顔にそのローラーをあて、使い始めた。
「ふむ、やはり、最新式はええのう!
よかろう! お主の願いを聞いてやろう!」
そういうと、女魔法使いは、杖を私の頭の上で、1度2度3度振った。
「かあーーーーー!」
声の衝撃と共に、私は、大都劇場の前にいた。
手には、その日の演目のチケットが握りしめられている。
私は、もしかしてと思いながら、劇場に足を踏み入れた。
そして、自分の席を探すのではなく、ある人物を探した。最前列から7〜8席目、中央より。
いた! 美しい婚約者を伴って。
大都芸能株式会社 代表取締役社長 速水真澄
紫織の卑怯な罠に陥り、最愛の女性、マヤを疑った男。
私は、なんとか側に行くと、紫織がいるにも関わらず、訴えた。
「速水さん、マヤちゃんが盗んだんじゃありません。」
真澄様は、その端正な顔を私の方へ向け、怪訝そうな顔をした。
「あの女が、マヤちゃんのバックを叩き落として、自分で指輪をバックにいれたんです。私、雑誌の外から見てました。その証拠に、伊豆の別荘に行ってみなさい。アルバムの写真がびりびりに引き裂かれているから。
紫織、このビッチ! 真澄様は、あんたなんか愛してないんだから!!!」
だが、その時、劇場の係員が私を取り押さえ
「お客様、ここで騒がれると困ります。」
と言って連れ出そうとした。
だが、私は抵抗した。
「速水さん、お願い、騙されないで!
マヤちゃんこそ、あなたの魂の片割れ。唯一無二の存在!
ウェディングドレスだって、紫織さんは自分からマヤの持っているジュースの上に倒れかかったの。」
その時、紫織が、青ざめた顔をして立ち上がった。
「な、何をいうの! そんな出鱈目! 第一、あの時、私とマヤ以外誰もいなかったわ。
あなたが知っている筈ないじゃない。」
紫織がはっとした。
真澄が、白目青筋で紫織を睨みつけている。
「この人の言った事は本当ですか?」
と紫織に詰め寄る。
「ええ、ですから、私、始めから私がふらついてジュースをこぼしたと言っていたでしょう。」
「あなたが、指輪をマヤのバックに入れたのですか?」
「いいえ、ち、違います。何故、私がそんな事、、、、。」
私は必死になって言った。今、言わなかったら、「ガラスの仮面」が駄目になる。
「その女は、あんたが、マヤを愛している事を知ったんだ。だから、あんたに嫌わせようとしてマヤを泥棒にしたんだ。速水さん、お願い、目を覚まして!」
その時だった。私の口を塞ぐ者がいる。黒装束に身を包んだその集団は私を羽交い締めにして連れ去ろうとする。
ミウッチの手の者だ。
「、、、うう、、、ううううう、」
私は抵抗したが、とうとう、大都劇場の屋上に連れ出されてしまった。
そして、黒装束達は、私に何か薬をかがせた。
次に目覚めた時、私は自宅の居間の床に倒れていた。
魔法陣は消え去り、ただ、しわ取りローラーのマニュアルだけが、床に落ちていた。
私はただ、泣いていた。涙も枯れ果てた後、やっと、いつもの日常に戻った。
そして1ヶ月。
「別冊 花とゆめ 2010年1月新年特大号」の「ガラスの仮面」を開いた。
そして、私はうれし泣きに泣いた。設定が変わっていたのだ。
速水さんは、やっぱり、紫のバラの人。
微塵もマヤを疑っていなかった。
終
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「別冊 花とゆめ 12月号」があまりにひどかったので、サイトのカウンターが1万になった記念にと思い私自身を主人公にしてショートショートを書いてみました。
お楽しみいただけましたでしょうか?
読者の皆様へ 心からの感謝を込めて!