八万アクセス記念  「かりんの冒険 Part2 」



 私、かりんは、またしても魔女を呼び出していた。
魔法陣で呼び出された魔女の名前はエシネ。
前回とは違う魔女だ。
豪華なレースと花と羽飾りに埋もれた美しい女。
サファイアのように透明な青い杖を持っている。
魔女は、私をじろじろ眺めながら

「で、そなたの望みは?」

と面倒くさそうに言い放った。

「あの、あの、私を『ガラスの仮面』の世界に連れてってほしいんです。
 これが、貢ぎ物です。」

私はまたしても最新式のしわ取りローラーを差し出した。
魔女はそれを受け取ると、ぽいと私に投げて帰した。

「こんなおもちゃじゃ願いを叶えて上げられないね」

「では、では、これではいかががでしょう」

私は、泣く泣く、iPad2を差し出した。
わざわざ、ニューヨークまで行って買ってきたiPad2 ホワイトモデル。

「悪いね、それなら、スティーブにもう貰った」

「え〜! ジョブズがあなたを呼び出してるんですか?」

「ああ、彼とはいい友人だが」

「えええ!、そうなんですか、で、で、次のiPhoneはどんなんです?」

「そういう情報はネットで検索しなさい。それに、友人の秘密を話すわけにはいかないね。
 それより、あんたの望みを叶えるほどの貢ぎものはどうやらなさそうだね。
 呼び出されたけど、私は帰るよ」

「じゃあ、じゃあ、せめてあなたのほしい物を教えて下さい。次までに用意しておきますから」

「……そうだね……。美しい物、儚い物、こちらの予想を裏切る物。そういう物がほしいね」

そう言って魔女エシネは、消えた。
私は自宅の居間に立ちすくんだまま、どうしたら魔女の欲しい物を用意出来るのだろうと考えていた。
それから数日。
私は魔女への捧げ物を用意した。
そして、魔女を呼び出し貢ぎ物を捧げ持った。

「なるほど、美しい物、予想を裏切る物ではあるな。だが、これのどこが儚い物なんだい」

私が捧げたのは一枚の振り袖。
絹地に描かれた満開のしだれ桜。金糸銀糸で縫い取られた水の流れ。
舞い散る桜花。

「この花は桜です。桜は春の一時咲き誇りますが、すぐに散ってしまいます。
儚い夢のような美しさなんです。それで……」

魔女は振り袖を受け取ると、するりと袖を通してみせた。

「ふむ、なるほど、いいだろう、おまえの望みを叶えてやろう」

魔女が青い杖を高くかかげた。
次の瞬間、私は「ガラスの仮面」の世界に入り込んでいた。


場所は、結婚式場の一階。
階段を靴音高く鷹宮紫織が降りて来る。
私は、はっとした。この後、紫織が自殺する。止めなければ!
もし、本当に死んでしまったら、速水さんとマヤの間に重大な傷を残す事になる。
あの身勝手なお嬢様をどうにかしないと!!
紫織が、化粧室に入った。
私は、紫織の後を追いかけた。

「いけない、死んではいけない」

私は叫んだ。
紫織が振り返る。

「きゃあ! 痴漢!」

私は、はっとして鏡を見た。なんと私は桜小路優に変身させられていたのだ。
しかも服を着ていない!
セキュリティが飛んで来る。
私は暴れた。

「違う、あの人が自殺するんだ」

「言い訳はいいから、出て行きなさい」

私を捕まえたセキュリティはいつのまにか黒装束の男達に変わっていた。
ミウッチの手の者だ。
またしても私は薬を嗅がされて、こちらの世界へ戻されていた。

数ヶ月後。
「別冊 花とゆめ」の「ガラスの仮面」を開いた。
設定が変わっていた。
桜小路優が痴漢になって鷹宮紫織の自殺を止めた結果、何故か鷹宮紫織と桜小路優が結ばれる展開になったのだ。
原因は、桜の振り袖。桜つながりで二人が結ばれたのだ。
私は満足して雑誌を閉じた。
しかし、痴漢を気に入るなんて!
お嬢様の趣味ってようわからん?







最後まで読んでいただきありがとうございます。
「かりんの冒険」Part2です。サイトのカウンターが8万になった記念にと思いもう一度、私自身を主人公にしてショートショートを書いてみました。
お楽しみいただけましたでしょうか?
読者の皆様へ 心からの感謝を込めて!




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