永遠の誓い 



北島マヤは教会の入り口で純白のウェディングドレスに身を包み速水真澄を待っていた。
何があったか知らないが、速水は行方不明だった。
マヤの携帯にメールが1通。


  結婚式には必ず間に合うように帰るから信じて待っていてくれ



マヤは心のなかで、

(速水さんのぶぁかあ〜〜!!)

と叫んでいたが、無事に帰って来てくれたら、結婚式に間に合わなくてもいいと思っていた。


その時、バランバランバランという音がだんだん近づいてくるのが聞こえた。
上空を見上げると、青く澄み渡った空に1台のヘリコプターが見えた。
マヤははっとした。
何か、落ちてくる。
あっと、思ううちに速水が降ってきた。真っ赤なパラグライダーで。
そして、教会の前の公園に、ふわりと降り立つ。
ハーネスをはずし、黒のツナギを脱ぎ捨てると、白のタキシードを着た速水が、現れた。

「速水さん!」

速水は走った! マヤが駆け寄った。

「マヤ!」

「速水さん!」

「なんとか間に合ったな。」

そう言いながら速水はマヤを抱きしめた。
抱き合う二人を、水城は引き離すと、

「社長、花婿は神父の前で待っててください。」

そう言って、速水を大急ぎで神父の前に連れて行った。
ウェディングプランナーが、教会の入り口に立ち

「それでは、花嫁の入場です。」と告げた。

荘厳なパイプオルガンの音が響きわたる。

速水は神父の前で待った。
マヤがバージンロードを歩いてくるのを。
そして、幸福な笑顔でマヤを迎えた。

神父が、厳かに結婚の誓いの文言を述べた

「新郎速水真澄、あなたは
 新婦北島マヤが
 病めるときも、健やかなるときも
 死が二人を分つまで愛し合う事を誓いますか?」

というと、速水が小さな声で

「そこは、『死が二人を分つとも』にかえて下さい。」

と小声でいった。神父は気色ばんで、

「当方の教義では、肉体が死ぬと魂は神の国に召される事になっております。
 仏教でいう所の輪廻転生は、教義に入っておりません。」

と小声で言い返した。速水は、

「御託はいいから、言い直せ。」と、やはり小声で、どなった。

「しかし、、、」と神父が躊躇していると

「速水さん、どうして今になってこだわるの。」とマヤがこれも小声で聞くと

「君は俺にまた、君の魂を探す旅に出ろというのか、君の魂は未来永劫、俺のものだ。」と囁いた。

神父はその言葉を聞くと、にっこり微笑んで、

「死が二人を分つとも愛し合う事を誓いますか?」と言い直したのだった。

速水の様子をはらはらしながら見ていた招待客は皆ほっとして胸をなで下ろしたのだった。


そして、二人は愛を誓った。死が二人を分つとも、永遠に愛し続けると。





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