女神降臨    連載第3回 



 誕生日の当日、マヤは麗と共にレストランへ向かった。
すでに、他のメンバーは来ていて、口々におめでとうと行ってくれた。
そこに、水城から電話が入った。

「マヤちゃん、ごめんなさい。せっかくのお誘い嬉しいんだけど、今、忙しくて、、、。
 そういうわけで、社長も行けないから。
 速水社長から伝言だけど、酒が飲めるようになったからといって、急に飲むなって言っておいてくれって、、、。」

「、、、や、やっぱり、招待状なんか出すんじゃなかった!
 人がせっかく気を使って招待状を出したのに、、、。
 嫌味社長に言っておいてください。
 あたしのお酒より、煙草の吸い過ぎに気をつけては如何ですかって!」

水城は笑いながら

「伝えておくわ。
 あなたが社長にこんな招待状を送るなんて、珍しい事。どうしたの?」

「日頃、お世話になってるし、招待状が余っていたもんですから、、、。」

「そう、余っていたのね、招待状。」 水城は含みのある言い方をした。

「大都芸能の社長が一女優の誕生パーティなんかに来る訳がないと思ってましたけど、、。
 一応、義理というか、、、。」

「ふふふ、、。マヤちゃん、せいぜいパーティを楽しんで!あ、そうそう、言い忘れたけど、二十歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう、水城さん」

そう言ってマヤは電話を切った。

メンバーが揃ったので、シャンパンが開けられた。
さすが、紫のバラの人。出て来る料理もお酒も素晴らしい物だった。

そこそこ、酒がまわり宴もたけなわとなってくると、そこは芸達者の集まりである。
酔った勢いで、様々な芸が飛び出した。

そして、やはりマヤは、酔っぱらって、よっぱらって、ヨッパラッテ、酔いつぶれた。

マヤのパーティが始まった同時刻、速水真澄は、マヤが住んでいるアパート白百合荘の前にいた。
警察の人間達と一緒に。

昨年、駐車場で起きた殺人事件は、警察の必死の捜査で、犯人がスーパーで買い物をし、床屋に行った所まで突き止められていた。
床屋の証言によって似顔絵が作成され各所に配布された。
聖唐人はその似顔絵を見ていた。一目で殺人犯だとわかったのだ。
聖は速水に至急報告。速水は驚愕した。そして、すぐに聖に匿名で警察に連絡させた。
結果、警察は白百合荘に住む木下武を内偵。重要参考人として署に連行しようと訪れたのだ。

殺された被害者は大都芸能の社員だった。
その為、速水は警察から連絡やら事情聴取を受けていた。
速水は、聖に通報させた後、警察に捜査の進行状況をそれとなく確認した。
親しくなった刑事は、有力な情報があったと話してくれた。
速水は、刑事にそのアパートの住人をどうするつもりだと聞くと、刑事は下手に避難してくれと言うと犯人に警察の動きがわかるかもしれないので、連絡はしないつもりだと言った。

(警察が犯人を逮捕しようとすると逆切れして暴れるかもしれない、マヤ達に危害が及ぶかもしれない。)

そこで、速水は警察を説得。マヤ達が誕生パーティに行ってアパートにいない間に警察に突入するよう頼んだのである。
案の定、刑事が木下の部屋に行くと、木下は逃げようとして暴れた。
速水は、マヤ達がいなくて本当に良かったと心からそう思った。

速水は、警察から木下に奪われたテープを返して貰うとその足でマヤの誕生パーティに向かった。

パーティが始まって既に3時間。そろそろお開きになろうとしていた。
桜小路と舞は、舞の門限があるからと一足先に帰っていた。
黒沼は屋台へと流れて行った。
一角獣とつきかげのみんなは2次会に行こうという話になったが、酔いつぶれたマヤをこのまま置いていけないしどうしようかと話し合っていると、そこに速水真澄がやって来た。

「遅くなったが、ちびちゃんは?」

青木麗が答えた。

「速水社長、今日は来られない筈じゃあ、、。
 すいません、わざわざ来ていただいたのに。
 マヤは酔っぱらってて、、、。この酔っぱらい、アパートまで送ってやっていただけませんか?」

速水は、麗に白百合荘で起きた事件をかいつまんで話し、今日は白百合荘に帰らない方がいいだろうと言った。

「まだ、警察関係者や取材に来た記者達がアパートの周りをうろついている。
 今日は帰らない方がいいが、どこか泊まれる所はあるか?」

麗を始め皆一様に驚き、ざわざわと話始めた。

「え〜っと、あたしはさやかの所に泊まるとして、マヤはすでに酔っぱらって寝ているし、さやかの所にこれ以上は泊まれないし、、、。」

「そうか、、、。そうだな。秘書の水城君にまかせよう。明日の朝、アパートに送り届けるよう手配しておこう。」

麗達はマヤを速水に預けると2次会へと流れて行った。

速水は、レストランで電話を借りると秘書の水城に電話をした。
ところが留守番電話になっており、水城は捕まらなかった。
仕方がないので速水は、マヤを車の後部座席に横たわらせると自分のコートを脱いでマヤにかけてやった。
速水は迷った。
マヤをどこに預けようかと、、、。
だが、速水はマヤと二人でいられるこの時間をもう少し味わいたかった。
速水は、大都芸能の社長室へと向かった。

雪がちらつき始めていた。



続く     web拍手 by FC2       感想・メッセージを管理人に送る


Back    Index    Next


inserted by FC2 system